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ある教育学徒の雑記

脳裏の落書きの保管場所

正しい大学デビューのすゝめ

大学

どうやら大学に新入生とやらが入ってくるらしい。大学に夢を持ちこそすれ、大学という場所を実感したことはない、新入生という新鮮な風が大学構内に吹き回す時期がくる。だいたい新鮮な風は半年ほどで淀み、沈鬱としたどろどろ大学生が誕生するのだが、ともかく、様々な思惑が錯綜する怒涛の非日常空間がそこには現出される。

 

「大学デビュー」は、おそらく新入生全てにとって悩むところであろう。新たな交友関係、新たな環境、授業は、友達は、他者への立ち振舞いは、サークルは、バイトはいかようにすればいいか、誰しも思い悩み焦るに違いない。Twitterで新入生同士が繋がり始め、「学部LINE」などというあまりに空虚で無意味なものが作られ、気の早い新入生はバイトを始めたり教習所に通い始めたりする。2月末から3月初旬に高校を卒業すれば、「校則」というタガが外れ、怒涛の勢いで自己の環境や自分そのものを改変しようと多くが努め始める。多くは空回りに終わる努力であるが、何かしなければという焦燥感に確固とした意思を持って抗える新入生はほとんどいないだろう。新入生の思う「あこがれの先輩」では到底ないであろう私が考える、正しい大学デビューを妄想してみたくなったので箇条書きでここに書き散らす。現役大学生は、「あるあるぅ」と思って読んでいただければ幸いである。

 

  1. 「新歓期間」というものについて
    「新歓期間」ほどの非日常を長期に渡って感じうる機会は恐らくそうないのではないかと感じる。例えば海外旅行中、出会った日本人に思わず話しかけてしまうように、新入生と分かれば各所で見境ないコミュニケーションが図られ、各人が仮初の集団を形成しようとする。いずれ分裂するその集団からわずか1日たち遅れるだけで行き場のない焦燥感を覚え、それが平時から見れば奇っ怪な高揚へと自己を駆り立てる。まるで大学生活の成否はこの1、2ヶ月で決まるとばかりに、本当の自分を偽って自己の所属を確定させようともがき苦しむ。それを「楽しい」と感じる人がいる一方で、そのあまりの怒涛たる非日常に馴染めず「息苦しさ」を感じる人も多く出る。高校時代からの友人が、この非日常に飲み込まれ外面的に変化していくさまは、なかなか珍妙であるが、同時にふとした寂しさを覚えるものである。ともかく、私の目からみた新歓期間はそういったものだった。

  2. 「自分」を、大学向けにどの程度適合させるべきか
    大学は、紛うことなく高校と決別した新環境である。もちろん高校来の旧友も同大学にいることとは思うが、出会うほぼ全ての人は初対面であり、何らかの間接的な係累がある人すら少ない。「友達の友達」まで広げればなんと世界は狭いことかと実感することも多かろうが、逆になんと世界に多くの人がいるのかと実感することもあるだろう。そんな新環境であるから、ある程度高校までの「自分」に仮面をかぶせつつ、自分の芯を偽らないことをおすすめする。

    人と人との交流の過程をあまり深く考察したことはないが、多くの場合、第一印象ほど初期の他者理解に重大に作用するものもないだろう。第一印象から「何だこいつ」と思われない程度には「自分」を繕う必要があるに違いない。客観的にみて「何だこいつ」と自分が思ってしまうような人は、相手もまたそう思うはずである。下を向いてぼそぼそ話したり、誰も聞いていないご高説を新歓イベントの席で滔々と演説なさったり、普段どんなに話せる環境が君の周りに整っていたとしても、そういうことはせず、相手は初対面であるということを意識したTPOくらいは持っておこう。逆に言うとそれ以外は要らないのである。

    よく大学に入るから自分のオタク趣味を隠さなければとか、大学はみんな茶髪でワックスつけたりお化粧したりしてキメキメでくるから自分もそんな感じにしなきゃとかそういう考えの人がいるが、あまりそこは重要ではない。少なくとも同調圧力にかまけてキメキメを志向したり、突然ロックとか聞くくらいなら小綺麗な服(サイズの合った淡い色のシャツにスリムフィットなパンツと適当なジャケットでOK)だけ着て何もせずそういったものにも疎いほうが、精神衛生上も外面的にもだいたいマシである。少しでも相手によく思われたいとか、髪を染めてみたいとか、そういう邪心(?)があるならばその心をきちんと受け入れ、おしゃれに取り組もう。

    私が、この項で特に強調したいのは、上述のような瑣末なことではなく、「自分を偽るな」ということに尽きるのである。大学に入った途端高校までの自分を捨て、キラキラした自分を志向し、そうしたツイートを量産しようと心がけ、後日しんどそうな顔でそうしていた自分を再度捨てにかかる人をたまに見る。結局自分ありきなのであり、誰から見ても「変わらないなぁ」と思われるくらいが本当は一番いいのである。ここは是非気に留めて大学デビューに勤しんで欲しい。

  3. 授業はどうするか
    大学にはやたらめったら講義がある上に、どれが面白い講義かもわからず、卒業要件も至極複雑であり、もうわからん大学死ねなどと早速呪詛を並べたくなるものである。あるいは友達も作りたいし、バイトもサークルもしたいしそうするとどの曜日開ければいいかわからないしもう授業なくていいんじゃね?(名案)なんてことになりかねない。ここで一般論的アドバイスを幾つか述べておく。

    ・全休は作れるだけ作ろう
    ・土曜日は極力取らないようにしよう
    ・マ◯ルストーンのような裏シラバスを入手しよう
    ・授業シラバスを必ず読み、取りたいと思える講義をなるべく取ろう
    ・1限は2日以上続けないように意識しよう
    ・3限(お昼開けすぐ)を週1くらい開けておこう
    ・卒業要件に直結する必選科目などはなるべく詰め込もう
    ・18時以降に行われる授業はとらないようにしよう
    ・二外と必修ではナンパしてでも友達を作ろう

    まず全休はつくれるなら必ず必要だ。1日1コマのために学校に行くほど不毛なことはないし、全休でも学校に来る用事があれば行くものである。次に土曜日についてだが、これは極力全休にした方がいい。様々な新歓イベントが土曜日にあることなどから授業のせいでそれに行けないという機会喪失は避けたほうがいい。次に裏シラバスの活用についてだが、必選なのに授業数多すぎていみわからんとかいう特に大変有用である。また遅刻に厳しい講義や課題があまりにも多い講義を取ると後々死ぬのでそういった講義を避ける用途としても使える。逆に講義が楽単かどうかの情報は当たるも八卦当たらぬも八卦で、むしろ講義に対する関心の有無のほうが単位取得に関して言えば遥かに問題となる。

    次に授業シラバスを読む件だが、これも必須である。結局内容はシラバスに長々と書いてあることが大半であり、それに興味を持てるかどうかを決め手とすべきである。これをしても外すことは多いが、しないよりは幾分マシである。1限については、4月病をこじらせてとったところでほぼ間違いなく続かなくなる。高校時代もっと早く起きれてたから...なんてことは全く関係ない。ほぼ確実にいけなくなるので必修以外で1限をいれる愚行はおすすめしない。高校時代から遅刻がちだった学生はなおのことダメである。3限を開けるのは、大学生活充実のためのちょっとしたおすすめである。大学周辺の飯屋は昼時、だいたい激混みで3限を開けておかねば入れないこともままある。そうした場所を開拓しておくと大学生活中多様な美味しいご飯に困らなくなる。また入ろうと思っているサークルのたまり場にお昼時顔を出すと先輩がおごってくれるイベントが発生しがちである。こうしたことから3限を開けておくと良い。

    卒業要件についてだが、こればっかりは所定の冊子を元にしっかりと把握するほかない。ガイダンスなるものもあるが、だいたい眠くなって爆睡してしまうし日本語が読めればだいたい解読可能なので受験で鍛え上げた読解力を片手に相手の言わんとしているところを汲み取ろう。これを把握したうえで、まだ意識も高く、授業優先度も高い1年次に要件を満たしてしまおう。18時以降の講義を取らない件だが、だいたいサークルの活動は18時以降の時間に行われることが多い。また、教習所やアルバイトなどを行う際も18時以降にそれを詰め込むことができる。夜遅くまで授業をとってしまうとそれで一日が終わってしまうのであまりおすすめはしない。

    最後に、授業で友達を作る件だが、これがわりと重要である。特に二外と必修では、自分を偽って無理をしてでもいいからなんとか友達をつくることをおすすめする。自分から行かなくても周りが皆そう思っているのでだいたい勝手にできるものだが、ソロ受講をキメようとする心が折れた時に、即落単に繋がり危険であるし、必修や二外を落とすと留年までまっしぐらである。一般教養の講義などでも友だちがいるに越したことはないが、突然話しかけて作るほどではない。ただ必修や二外では作っておくことを強くおすすめする。

  4. アルバイト・サークル等、授業外はどうするべきか
    しばしば見る光景だが、大学入学前の3月から、授業外の予定を詰め込み、サークルを仮決定くらいまで決定し、アルバイトのシフトや教習所の予約で自分の予定をがんじがらめにしようとする人がいるが、あまりおすすめしない。暇の貴重さについては以下のポストも合わせてどうぞ。

    大学に入ってからの予定というものは、入学前から想像していたよりずっと突発的で不定期であり、それを入学前からアルバイトなどで縛ってしまうことは愚行であるといえる。おすすめはなるべく暇な状態で、大学生活に突入することである。もちろん各種予定を入れやすくするというのも1つの理由だが、疲れた時にいつでも休めるようにしておくというのがおすすめの最たる理由である。人というものは人前以外では案外体力がないものだと思う。新環境に気張って1ヶ月緊張しっぱなしでいられるほど人間強くはないと思うのだ。

    さて、アルバイト選びやサークル選びについてだが、基本は「自分の興味」を主体として選んだほうがいい。「なんとなく気になったから」が常に最大の動機であるべきである。サークルの雰囲気や実態などというものが僅かな時間の説明会や新歓食事会でわかると思ってはいけない。だいたいどこのサークルも悪いところを隠して擬態しているものであり、とりあえず入ってみて活動が合わなかったらやめればいいのだ。一部新歓期に一括で囲い込むサークル以外、案外サークルの構成員は流動的であり、2,3年になってから入れるサークルも多いから、焦って新歓に突っ込み、「失敗した」などと自分を追い込まなくてもいいのである。逆にこれくらいのフランクさを持てない義理深い人は苦労しがちである。是非頑張って欲しい(他人事)

    サークルについてであるが、「サークルに入らない」という選択肢は、あまりおすすめしない。最初は一つくらい入っておくことをおすすめする。授業やその他様々な場面で、「ノンサー」状態は結構肩身が狭い。また周りが楽しむ中で自分だけその輪に入れないことから生まれるやっかみとも戦わねばならなくなるし、所属がない状態というのは、何かと寂しいものである。合わないと思ってさっさとやめてもいいから、サークル活動の欠片くらい経験しておくと、後々ラクである。

    アルバイトについてだが、「アルバイトをしない」という選択肢は大いにありである。よく、アルバイトに精を出しすぎるあまり、大学生活に傾けるバイタリティを失い、低給で稼ぎ続けるだけの存在になった結果、自己存在の意義について深い思索に陥る(?)学生を見かける。バイトを少しでもして家に金を入れないと経済状況がやばいとかでもない限り、無理してアルバイトをする必要はないのだ。世の中では、サークル加入同様、4月にアルバイトを決めろ!と言わんばかりの風潮があるが、自分の始めたい時に始められるアルバイトなどいくらでもある。アルバイトはできれば、大学生活に慣れ余裕ができてきた後に始めることをおすすめする。アルバイトによる特有の経験や人間関係もまた、体験しておいて損はないのではないだろうか。(かくいう私は、あまりにも特殊なバイトをやっているため全く語る列にいないという実情がある。)

    それ以外の細かなアドバイスだと、教習所には早めに通い始めたほうがいいというのがある。ダラダラするうちに1年の夏を過ぎると一気に取る機会を失う。車に乗れるだけで何かと便利なものである。是非取るといい。

 

ダラダラと、新入生が気になりそうなことに対して書き散らしたが、最後に新歓というものに対する一つの見方を提起してこのひどい記事を終えたい。新歓期間は「新入生歓迎」期間というよりはむしろ、新入生が試される期間であるという見方である。実際の所、新歓期間にどう生きようが、その後の大学生活が成功裏に終わるかどうかは全くわからないのだ。新歓イベントで出会ってLINEを交換した隣のあの子とは、その後一切交流がないかもしれないし、何故か4年間を通じた友人となるかもしれない。新歓期間は、新環境に置かれた非日常状態の新入生が、如何に自己を保ち、自分の手で、自分自身にとって善い大学生活を模索していけるかを試す期間といえる。(そもそも真に新入生を歓迎しようと思って新歓をやっている輩ばかりではない)新歓における真の失敗とは、自分を改変した気になって、様々飛び回った結果、何一つ「自分」に合う形を見つけられず、徒労感と義務感に苛まれながら仮初の笑みだけを顔に張り付けて、やがて大学にさえ通えない存在となることではないか。こうなるくらいなら「何もしない」という選択肢を選んで、ぼっち充をキメられるように修練したほうがましである。

 

大学生活とは、モラトリアムである。大抵の失敗は、猶予に消化され、美化された思い出に還元される。結局大学デビューの成功とは、2年次以降もそれなりの楽しみを持って学校に通える存在になることであり、そうなるには何もガチガチに緊張して大学生活に臨まなくてもいいのだ。大学生活とは、大変に空虚なものだが、ある程度多様であるものだ。是非善い大学生活を。

それなりの楽しみを見つけたある大学生より。